【兜特集】人気武将兜の種類を紹介!前立てに込めた意味とは?
戦国時代の武将たちにとって最も重要な頭部を守る甲冑が「兜」です。なかでも歴史に名を連ねる名将たちは、頭部を守るという防具の意味以上に、戦場で目立ち、威厳や地位を誇示するため自らの兜に個性的な立物を取り付けました。歴史上の名将たちが自らの矜持や信念を表す兜のデザインは、今なお人々の心を動かします。
兜には、各部位ごとに「前立て」「兜鉢」「吹返」「錣」「目庇」「面頬」といったように細かく名称が分けられ、多くの部品から成り立っています。
歴史上有名な兜としては「真田幸村」「伊達政宗」「上杉謙信」「織田信長」などがありますが、それぞれ「伊達正宗」の兜には道教を表す「三日月」。「真田幸村」の兜には、神の使いと死後の平安を表す「鹿の角」と「六文銭」。「上杉謙信」の兜には、妙見信仰を表す「日輪」と「三日月」。「織田信長」の兜には、鳥の巣と神の御加護を表す「木瓜紋」と「御簾」。といったように各武将の鍬形や前立てには強い信仰と意志が込められています。
また、こどもの日は鎌倉から江戸時代の武家社会の影響を受けた部分が多く、当時の武士たちの慣習を真似たものが、兜や甲冑を飾る文化を作り上げました。5月人形は、その武士たちを真似た江戸時代の庶民から伝わったものと言われています。
兜・甲冑の構造について、各部名称
1.立物(たてもの)
平安時代以降の兜に取り付けられるようになった兜の装飾物。取り付け位置は様々で、前面に付ける前立(まえだて)、側面に付ける脇立(わきだて)、頂点につける頭立(あたまだて)、後部につける後立(うしろだて)、といったように取り付けられる位置によって名称が異なります。立物が登場して以降、初期には兜と「一体型」の前立が一般的でしたが、衝撃を受けた際に外れやすくすることによって、頭へのダメージを和らげる効果があることから「楔形」の前立が広く使われるようになりました。2.兜鉢(かぶとばち)
兜の主要部分で、頭部を覆う部分。形状によって大きく分けて4つの名称があり、頭の形に沿った頭形(ずなり)兜、筋のようなラインが入った筋兜、桃のようにカーブを描いた桃兜、全体に尖った凹凸のある星兜という4種類があります。3.吹返(ふきかえし)
吹き返しには「刀が当たらないように顔を守るため」「甲冑師の細工技術を披露するため」という大きく分けて2つの目的がありました。吹返の細工技法には、金属を彫って仕上げた「本彫金」や、なめした革に漆で模様を描いた「印伝」などがありましたが、戦法の変化によって吹き返しは縮小の一途を辿りました。4.錣(しころ)
兜鉢の後方に取り付けられる板のことで、刀や矢から首筋を守る目的で活用されました。取り付けられる板の枚数によって呼称がことなり、3枚の場合は3枚兜、5枚の場合は、5枚兜といったように呼ばれました。5.目庇(まびさし)
帽子でいうツバの部分で、帽子と同様に雨や日差しを遮ること、刀から額を守るという2つの目的で取り付けられました。取り付けられ方によって3種類あり、鉢に板金を鋲留めした「付眉庇」、鉢から斜め下方向に突き出た「出眉庇」、垂直に突き出た「直眉庇」があります。6.面頬(めんほお)
面頬には大きく分けて「顔を隠すことで相手を威圧する」「刀から顔面を守る」という2つの目的があります。覆う面積によって呼称が異なり、顔全体を覆う「総面」、鼻から下を覆った「面頬」、アゴのみを覆う「半頬」、額から頬を覆う「半首」があります。歴史上有名な戦国武将の兜について
伊達正宗
出羽国と陸奥国の戦国大名、伊達氏17代当主の伊達政宗。彼の兜は「三日月型の鍬形」が特徴的です。彼の兜の鍬形が「三日月型」になったのは大きく分けて2つの理由があると言われています。
一つ目は、「妙見信仰による影響」です。妙見信仰とは、仏教の宗派の一つ「道教」のことで、特に北極星・北斗七星に対する信仰を指します。道教では、星や月、太陽を神として崇める慣習があり、「星」「月」「太陽」それぞれ信仰する対象によって宗派が異なりました。彼は「月派」に属していたため、鍬形に月が選ばれました。また、月の中でも三日月を選んだのは、シルエットの好みと戦時に刀の邪魔にならないためだと言われています。
二つ目は、「秀吉に気に入ってもらうため」です。伊達政宗は、故郷東北から天下統一を狙って領土を広げていましたが、当時西側から勢力を拡大していた豊臣秀吉から臣従申請が届いたため秀吉の家臣となり、彼の天下統一の夢は儚くも崩れました。
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真田幸村
大阪冬の陣で活躍し、「日本一の兵」とも讃えられた、戦国時代を代表する武将、真田幸村。彼の兜は「鹿の角」と「六文銭」が特徴的です。
彼が鍬形として「鹿の角」を選んだのは、鹿が古くから神の使いとして大切にされてきたからだといわれています。鹿が神の使いといわれるようになったのは、険しい山道を颯爽と駆け抜ける姿が神秘的な力を持つように見えたことからです。
また、前立てとして「六文銭」を選んだのは、戦死に対する覚悟の表明のためだといわれています。そもそも「六文銭」とは、納棺の際に死後の平安を祈るために「三途の川の渡し賃」として棺に六銭投げ込む慣習から生まれたもので、彼は六文銭を兜に描くことで兵士に対する意思表明を行なっていたと考えられます。
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上杉謙信
生涯で70回の戦に出陣し、うち敗北が2回のみという勝率の高さから「軍神」とも呼ばれる上杉謙信。彼の兜は太陽を表す「日輪」と「三日月」の鍬形が特徴的です。
彼が鍬形として「日輪」と「三日月」を選んだのは「妙見信仰」による影響を受けたためだと言われています。彼は仏教に対する信仰が厚かったことから、妙見信仰の中でも「月」「太陽」の両者を信仰していたことから兜の鍬形として「日輪」と「三日月」の両方が設置されたと考えられています。
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織田信長
「楽市楽座」や「関所の廃止」など斬新な発想に基づく改革を積極的に行なった戦国武将、織田信長。彼の兜は家紋である「木瓜紋」と「御簾」が特徴的です。
「木瓜紋」は、地上の鳥の巣を表しており、鳥の巣から卵が孵化し小鳥たちが飛び立つことから子孫の反映を意味しています。また、「御簾」とは宮殿や寺院で用いられる「すだれ」のことで、神の御加護に対する期待が込められています。
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端午の節句について
端午の節句の意味
端午とは「月のはじまり」を意味する「端」と、「午の日」を意味する「午」が合わさった言葉です。従って、端午とは本来、月のはじめの午の日を表す言葉でした。しかし、「午」と「五」の音が同じだったことから5月5日を指すようになったと言われています。また「節句」とは、季節の折り目を表す言葉で、「節供」とも表現されます。神様に食べ物を供える行事を指すようになりました。日本では5つの節句があり、端午の節句はその一つです。
中国から伝わった端午の節句は、奈良時代では菖蒲(しょうぶ)の薬草を摘んで邪気を払うといった宮廷行事でした。しかし、鎌倉時代の武家政治の影響を受ける中で菖蒲(しょうぶ)が、武士道を尊ぶことを意味する尚武(しょうぶ)へと変遷していきました。その中で兜や甲冑を送る文化が成り立ち、男の子の日という風潮になったと言われています。
こどもの日に兜を飾る意味
子どもの日に兜を飾るのは、武家社会の風潮が基礎となっており、大きく分けて2つの理由があります。1つは、鎌倉・室町時代の武士が毎年5月頃、座敷に甲冑を座敷に出していたことが由来します。これは梅雨前に武士たちが甲冑の手入れを行うために行っていました。
2つ目は、神社にお参りする際に甲冑を奉納するしきたりの影響です。鎌倉・室町時代の武士たちは、見の安全を祈願するために神社に甲冑を納めていました。
5月人形とは
5月人形が生まれたのは江戸時代で、これは鎌倉時代の武士たちを真似た庶民から伝わったものです。江戸時代の庶民たちは、過去の武士を真似て、自宅で兜や鎧、槍などを手作りし、家の前に飾っていました。その際に神様が降りてくる目印にするため兜の頂に人形の細工物を乗せました。その人形が独立したものが5月人形の始まりだと言われています。まとめ
いかがだったでしょうか。
兜には多くの部品が存在し、複雑な構造になっていることがお分かりいただけたかと思います。
歴史上有名な武将の兜として「伊達正宗」「真田幸村」「上杉謙信」「織田信長」4人の武将を上げましたが、各武将の鍬形や前立てが強い信仰や意志によって作られたことが分かります。
また、こどもの日は鎌倉から江戸時代の武家社会の影響を受けた部分が多く、当時の武士たちの慣習を真似たものが、兜や甲冑を飾る文化を作り上げました。5月人形は、その武士たちを真似た江戸時代の庶民から伝わった文化です。
ぜひ歴史プラスでお気に入りの兜を探してみてください。
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